エッセイ 女王様の退屈

第3章 カレーライス


女房は生来の低血圧で、朝はすこぶる機嫌が悪い。

血圧が80以下になるとさすがに、気持ちが悪いらしく、朝食も食べられないらしい。

「何にも食べないのも体に毒だから、何でも好きな物を言ってごらん。」

「こんな時だから、さっぱりしたものがいい。」

「"さっぱりしたもの"だけじゃわからないよ。例えばどんな物?」

「カレーライスとか・・・」

「カレーライスのどこがさっぱりしてるのさ。どっちかというと、こってりしてないか?」

「口の中に入れるとカーッとなって、そのあとスーッとなるから、わたしにとってはさっぱりしたものなのよ。」

なるほど、香辛料が、胃酸を分泌させ食欲を増進させたり、血圧を上昇させたりする作用を考えれば、女房の言うことにも一理はある。早速、買い置きのレトルトパックのカレーを電子レンジで温め直して、差し出すと、女房はうまそうにぱくついた。

しかし、いくら香辛料に昇圧作用があっても、そう簡単に血圧が上昇するわけではない。まだ80あたりをうろついているらしい。

カレーライスを平らげて10分ほどした頃、女房はトイレで先程食べたばかりのカレーを吐いている。洋式便器を両手で抱きかかえるようにしての縁に顔を埋めてうずくまり、口にはまだ茶色い物が付着している。

もし、ビデオカメラがあったなら、私は迷わず、この光景を撮っていたことだろう。そして、逆回転させて友人達に見せてやろう。

タイトルは『女房がうんこをたべているところ』とかなんとか。

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